松崎有理『あがり』

松崎有理『あがり』

ガチガチの理系SF。
別に生物化学数学統計とかの知識がなくても理解することは容易なのだろうが、それらにアレルギー反応を起こす人間にはどうも目が滑る。
更にSFだという頭があると、取り上げられている話題が現実性の高いものか、まだ空想レベルのものか判然としない。そのせいでSFを読んでいるというより単に理系的なミステリテイストの物語、という印象である。

舞台は北の街にある古い国立大学。モデルは作者の母校の東北大と仙台の街だろう。
6つの短編はそれぞれゆるやかに繋がっている。

『あがり』
信奉する研究者の追悼のため、とある実験に没頭する友人を見守る女性研究者。
私の脳みそが足りないせいかよくわからなかった。

『ぼくの手のなかで静かに』
30前なのに薄くなりつつある髪の毛と体重増加に悩む数学者が主人公。
冴えない彼が本屋でばったり出会った女性に一目惚れをし、数学を教えることで彼女と仲良くなる。
そしてとある実験結果に基づいたダイエットをはじめる。
急転直下の展開だったが、実験結果と彼の恋愛を上手に絡めていてなるほどだった。

『代書屋ミクラの幸運』
博士号取得者は3年以内に1本以上、論文が学術誌に掲載されないと追放という法律ができてから、論文の代書業がもてはやされるようになったという設定。
大学を卒業後代書屋となったミクラが、定年間際の文学部教授の代書を引き受ける。
数理社会学社の教授が編み出した運・不運の法則通りに、ミクラは様々な幸福と不幸に襲われる。
非常に救いのない話だった。
女は怖い。

『不可能もなく裏切りもなく』
論文提出期限が迫っている中、精神的な問題で論文を書けない友人と共同執筆に取り組むことを決めた主人公。
主人公は論文を書く担当、友人が実験をおこなうことになる。
最初から破滅的な結末は匂わされていたのだが、バッドエンドまでのルートが意外だった。

『幸福の後を追う』
動物実験用のしまりすに恋をした学生の物語。
シュールな設定だけれど、大学時代を思い出し身につまされる思いが。

『へむ』
変わり種の一編。
絵を描く事以外に無関心な11歳の男の子が、転校生の女の子と親しくなる。
大学の地下通路をめぐるふたりの冒険。
最近軽やかな文章ばかり読んでいたせいか、きちきちした情報量の多い地の文がとても疲れた。
SFの上に生理学的な内容も読者に説明しなくてはいけないせいでどうしても説明的になってしまうし。
ロジカルな話が好きな人には面白いと思う。

ファンタジーではないSF、特に理系要素の強いものはあんまり好みじゃないかなと改めて思った。

(読了日:14/1/29)

松崎有理『あがり』
出版社: 東京創元社 (2013/10/30)

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