吉田修一『7月24日通り』

吉田修一『7月24日通り』

長崎で暮らす地味なOL小百合が主人公。恋愛小説ではあるものの、どちらかと言えば主人公の成長ストーリーの印象が強い。

小百合は特別美人ではないがブサイクでもない普通の女として生きてきた。地元の町をポルトガルのリスボンに見立て、妄想を膨らませることで地味な毎日を彩っている。高校陸上部の同窓会で、あこがれの聡史先輩と再会し、昔の恋心を思い出す。

高校時代自分に好意を持ってくれた男があまりに自分に相応過ぎて、彼を無視したり、イケメンの弟と付き合っている平凡な女の子に「身の程を知った方がいい」と思っていたり、自分の客観的評価を自覚していてもそれを受け入れきれないところの表現がうまい。
小百合の自己評価の低さは自意識の強さと紐付いていて、とにかく傷つかないように生きている。

その価値観が、聡史先輩との再会を端緒とする出来事で変わっていく。
最後の小百合の選択は意外だった。やっぱり原体験的な恋って理屈じゃなく、忘れられないものなのだなあとしみじみである。

中谷美紀主演で『7月24日通りのクリスマス』として映画化されている。
映画を観た時はうーん普通と思っていて、原作にも惹かれなかったけれど、読んでみるとストーリーが全く違っていた。
長崎の町をリスボンに妄想するところと登場人物の関係性くらいしか共通点がなく、小説で巧みに描かれていた”モテない女”の機微が失われている。映画化したせいで変に軽い(チープな)イメージがついてしまったのではないかと思う。

(読了日:14/2/5)

吉田修一『7月24日通り』
出版社: 新潮社 (2007/5/29) 

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