春口裕子『隣に棲む女』

春口裕子『隣に棲む女』

すべて女性が主人公で、女の嫉妬や欲望、自意識やプライドといったものがないまぜになって出来上がったストーリーの短篇集である。
サスペンスというジャンルは小説ではあまりもてはやされない気もするが、ああたしかにこれはサスペンスかも、と読み終わって感じた。
イヤミスというほどに人間に踏み込んでいないところとか。

『蟬しぐれの夜に』
は不妊をめぐる三人の女の話。
どんでん返し系である意味後味は一番悪い。

『ホームシックシアター』
打算的に結婚し、愛人を持って自由気ままな別居婚を送っている女が主人公。
世にも奇妙な物語でありそうな展開だった。

『オーバーフロー』
端的に言えば、人畜無害で気配りの人である主人公が結婚詐欺に遭う話だが、人間関係の中で擦り切れてしまういい人を描いたお話として面白かった。
完成度は一番高いと思う。

『ひとりよがり』
裕福な家に生まれ何不自由なく暮らしてきた女王様タイプの主人公が、病気の妹を献身的に介護する男と出会い悲劇に巻き込まれる。

『小指の代償』
スキー場での事故で小指を無くしてしまった友人を気遣うカップルの話。
いくらなんでもそこまでやるか?という違和感がずっと残り続けて話に入り込めなかった。
ハッピーエンドではある。

『おさななじみ』
子持ちの主婦が優等生だった頃の自分を回想する。
母子の関係、自傷行為など現代の病理的な内容盛りだくさん。
ちょっと冗長だった。

文章があまり上手ではなくテンポが悪いところが多々ある。そして全体的な雰囲気が少し古めかしい。
印象に残る話ではないが、暇つぶしにはまあいいだろうという一冊だった。

(読了日:14/3/28)

春口裕子『隣に棲む女』
出版社: 実業之日本社 (2011/6/4)

 

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