嶽本野ばら『スリーピング・ピル 』

嶽本野ばら『スリーピング・ピル 』

久しぶりの野ばらちゃん。
短篇それぞれに何かしらの偏愛アイテムが潜んでいる。
ゴシック、ロリータ要素は薄めで耽美なお話は多い。

『Sleeping Pill』
睡眠薬に魅入られた主人公は、毎夜オリジナルでブレンドした薬で眠りにつくことが幸せだった。
同じベッドで眠れば睡眠薬なしに眠ることができる女とめぐり逢い、彼女を心から愛するようになる。
敬体と常体が入り乱れる文章はルールから反しているけれど、夢のように曖昧で揺れ動く物語の空気にマッチしていた。
睡眠薬、恋人、祖父の秘密と自分の妄想、とつながっていき、意外なラストが用意されている。
短いが巧みな物語である。

『Somnolency』
眠り病の薬を研究する異端の医者の元に女が訪ねてくる。
綺麗にまとまったお話。

『Double Dare』
ゴシックロリータ好きの主人公が登場するホラーテイストミステリ。
お洋服が取り上げられるのはこの話だけ。

『Pierce』
両耳に40個のピアスをあけている女の子が運命の相手と出会う話。
読んでいて痛い。

『Pearl Parable』
この辺りから耽美色が濃くなる。
クレオパトラが真珠に溶かした酒を飲んだというエピソードを下敷きにした掌編。

『Religion』
悪魔崇拝をテーマにした常識を超越した愛を描いた話である。綺麗にまとめたらそうだがかなりエログロ。
そう感じる読者を投影する人物を最後に持ってきたのが毒が効いていていい。
ただエログロ。

『Chocolate Catana』
娘に向精神薬を混ぜたチョコレートを食べさせ続ける変態的な父親の話。
読者が主人公の変態ぶりを哲学に昇華できるかが鍵。

『Notsubo』
野ばらちゃんにしては珍しいタイプの話。
ロリータでも耽美でもない。軽いテイストのホラー。

(読了日:14/4/29)


嶽本野ばら『スリーピング・ピル 』
出版社: 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011/1/25)

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