江國香織『都の子』

江國香織『都の子』

数ページの短いエッセイ集。
子供の頃の体験や風景、出会った人々などを描いていて、今日こんなことがあった、というものではなく過ぎた日のことが丁寧に紡がれている。

江國香織のエッセイは先が気になって一気に読んでしまうような引力はないのだが、
ずっと浸っていたいようなぬるま湯のような心地よさがある。
このエッセイ集は特にその印象が強かった。

20代の終わりに書かれた文章だから、女としてまたひとつ別のステージに上ってしまう区切りを感じていたのだろうか。幼少期の敏感で繊細な感覚を懐かしみつつ、でも大人になるのも悪くはない、という自然さが魅力的である。

単行本が出版されたのは1994年。
20年という時を経ても色褪せない感覚こそ消費されるカルチャー的な文学との大きな違いなのかと思う。

(読了日:14/6/15)

江國香織『都の子』
出版社: 集英社 (1998/11)

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