田丸公美子『シモネッタのドラゴン姥桜』

田丸公美子『シモネッタのドラゴン姥桜』

田丸さん、初めてイタリアとイタリア語から離れ、子育てエッセイ。
社交的で行動的で明るく女にモテ、遊び、
開成、東大、在学中に司法試験に合格して弁護士という炸裂した息子ユウタくんの半生。
息子への愛と誇らしさがこれでもかと伝わってくる。
不思議と嫌味や自慢と感じない、カラっとした語りっぷり。

35歳で出産に至るまでの急転直下の展開から始まり、
息子が弁護士となって家を出て行くまでの日々が相変わらず面白おかしく綴られている。

だけれども前半は特に、無償の愛と言える子供への愛情を感じ、
子供のけなげさを垣間見、特段感動させる表現や展開ではないのにじんわり泣けてくる。

中学受験~大学受験までは自分の人生と重ねあわせる部分が多かった。
公立校だったものの周囲には東大京大一橋お医者さんも少なくなく、大学受験についてのスタンスというか価値観が似通っている。
こうして客観的に見ると、しょうもないことだったなあと思う部分もあり、だけど同時にそれが自分の世界のほとんどだったから、振り返ればくだらないことでも必要な経験だったなと思う。

ピカイチに勉強ができる友人たちがそこ至ったのは、生まれ持った効率的な脳みそもしくはコツコツ努力する才能だと思う。
確かにどう考えても脳細胞の回路と性能が違う人もいた。
あれは天才。
でも天才だけが優れているわけではなく、ちゃんと能力を高め積み上げていくことができる人も別の方向性で優れている。
だから本人の才能と親の教育方針、環境がいい塩梅でマッチしたら幸せなんだろうなあ。
どちらか(ほぼ子供だけど)がストレスを抱えて成功する場合もなくはないけど、
それはいつかゆがみを生みそう。

予想通り田丸さんは超放任主義。仕事も忙しい。
でも息子は心配だし構いたい。
そんな不器用さも伝わってくる。

私も親から勉強しろと言われたことは一度もないので、ユウタくんと同じような環境にいたかもしれない。
まぁ私は中学までの遺産を食いつぶしてようやっと大学に入ったクチですが。

やっぱり、青春時代はたくさん遊んで、悩んで、勉強するべきだなあと、心から思う。

親世代がターゲットになりそうな本書だけど、子供の目線で読んでも楽しい。
誰しも誰かの子供であったから、自分の親を思い浮かべ、子供時代を懐かしく思い出すことでしょう。

ついでに、開成へのイメージが大きく変わりました。
時代はこれからどう変わるかわからないけれど、
たくさんのものと触れ合って自分の言葉で伝えることができる人は、
どんな環境でも自分の足で歩いていけるのではないかと思った。

(読了日:12/3/3)

田丸公美子『シモネッタのドラゴン姥桜』
出版社: 文藝春秋 (2011/7/8)

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