沢村凛『ヤンのいた島』

沢村凛『ヤンのいた島』

刊行順に読んだほうがベターだという持論を述べながらも今更デビュー作へ。
ファンタジーノベルス大賞受賞作ということで、文章は読みにくい部分もあり、構成もわかりにくかったのだが、エネルギーを感じる物語だった。

パズルのピースの形をした南の島・イシャナイでは、政府軍とゲリラが抗争を続けている。
そこに研究員としてやって来た瞳子が主人公。
架空の生き物であるとされる生物の実在を信じ、確かめるため学者を志した瞳子は、深夜に仲間から抜け出し島を探索している途中にゲリラに捕らえられる。

瞳子とゲリラたち、特に頭目・ヤンとの関係性が物語の軸となり、この抗争の行く末、瞳子とゲリラたちがどうなるのかを描くのが話の筋。

物語の途中で瞳子は頻繁に謎の夢を見る。
3パターンの夢の中でイシャナイの状況は大きく異なり、ただ瞳子とヤンだけが共通して登場する。
それはパラレルワールドだった、ということが序盤で明かされるのだが、
この仕掛けは後でかなり物語の深さを与えるものの、場面展開が唐突で理解が追いつかないところがあった。
比較的厚い本なのだが、もう少し分量があった方が丁寧だったか。

戦争、資本主義の負の面、民族の対立、搾取するものとされるものなど、現代社会に通じる問題がふんだんに織り込まれている。
とても示唆に富んだ、考えさせられる内容だった。
オチは確かに弱いと思うけれども。

沢村さんは一貫して書きたいことは変わらないんだな、と感じた。

(読了日:14/7/1)

沢村凛『ヤンのいた島』
出版社: 角川書店(角川グループパブリッシング) (2013/2/23)

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