明野照葉『さえずる舌』

明野照葉『さえずる舌』

産業カウンセラーとして独立し、順調に事業を拡大している真幌は、セミナーの受講生だった芽衣と再会する。
芽衣の不思議な魅力と商才に惹かれ、経営するヒーリングスタジオのスタッフとして雇い入れる。

美しく機転が利き、非の打ち所がない芽衣だったが、やがて彼女が無数の嘘をつき、人間関係を壊す精神病質者であることに気づく。

芽衣の引き起こす不穏な出来事を描いた中盤までは良かったのだが、途中から芽衣の視点も入り出したところで急に恐さが無くなった。
つかみどころのある奇妙さ、不快さに程度が落ちてしまった上に、芽衣が真幌に対して起こす行動も、悪い予感を遥かに下回るささいなこと。
途中まではほんの少し、貴志祐介の『黒い家』と通ずるようなほの暗さを感じていたのに、あれ、急に昼ドラチック?
徹底的に芽衣を人間味のない悪役に仕立て上げればいいのに、つまらないヘマを犯す上に、小物の対応で精神病質の部分が薄らいでしまった。

結局芽衣を追い込んだのは真幌ではないのではないか、という違和感が拭えない。

厚さの割に展開が乏しく、カウンセラーの仕事や精神病の話など説明的な内容が多かったため冗長さだけが残ってしまった。
決してつまらないわけではないのだが、なんか惜しいなあ、という印象である。

(読了日:14/7/13)

明野照葉『さえずる舌』
出版社: 光文社 (2009/3/12)

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