小川洋子『物語の役割』

小川洋子『物語の役割』

小川洋子の3講演をまとめた1冊。
タイトル通りに物語の効用、書くことについての内容となっている。
これまでエッセイでも語られる内容なのだが、よい話は何度聞いても味があるのである。
ちくまプリマー新書は中高生向けのレーベルだから、文章も平易だし小一時間で読める分量なのだが、与えられるものは多い。

第一章では物語は何か、ということを主に『博士の愛した数式』を題材として述べている。
第二章は『リンデンバウム通りの双子』をメインに物語の役割、創作の過程・意義について。
第三章は小川さんの幼少期の体験をはじめ、私的なエピソードを盛り込んで語られる。

小川さんがどんな風に物語の種を見つけ、育てていったかがわかる。
語られた内容を踏まえると、本の読み方が変わるだろう。

本書で特に印象に残ったのは2点。
”たとえば、非常に受け入れがたい困難な現実にぶつかったとき、人間はほとんど無意識のうちに自分の心の形に合うようにその現実をいろいろ変形させ、どうにかしてその現実を受け入れようとする。”
日々日常に起こること、それ自体が既に物語である、という指摘は示唆に富んでいる。

そして物語はあらすじに落としこむとしょうもなく感じてしまう、という箇所。
確かに小川さんの物語をまとめようとすると、イマイチ魅力的にならなくて苦労する。
だから、たった数行で意図が伝わるのなら何百枚も書く必要はなく、物語を書く意味がなくなってしまう、というのは、非常に共感できた。

自身の著作以外もいろいろな物語が紹介されるが、ナショナル・ストーリー・プロジェクトから抜粋されたゲイカップル話が秀逸である。
愛だ。

(読了日:14/8/1)

小川洋子『物語の役割』
出版社: 筑摩書房 (2007/02)

 

Pocket