長野まゆみ『テレヴィジョン・シティ〈下〉』

長野まゆみ『テレヴィジョン・シティ〈下〉』

長野まゆみ『テレヴィジョン・シティ〈上〉』

幻想的だけれど不穏な結末がちらつく物語は、
下巻に入りとうとう具体的な崩壊が始まる。

イーイーは日毎に衰弱が激しくなり起き上がることも難しくなる。
与えられた精油を飲まずにいるアナナスは体は健康のままだが記憶の喪失や意味不明な言動が増えていく。
イーイーを挟んで微妙な三角関係にあったシルルが消え、ジロも精油のせいで少しずつおかしくなっていく。

結局世界はどうなっているかは明かされないまま物語は終わる。
ディストピア小説にとって世界は崩壊せず、無力な登場人物たちはその環の中に留まり続けるというラストは最悪な結末なのではないか。

飲まないと眠ることが出来ず体力を維持できない『ヴィオラ』の成分が薄まり衰弱していくイーイーの姿が痛々しく、こんな条件を考えだした作者が恐ろしくなる。
そうしてアナナスたちは一体何者なのか?
碧い星に到達することはできたのだろうか。

すべてがぼんやりして真相を明かさぬまま終わってしまった。
じっくり丹念に読むともっと気づきや考えが浮かんでくる気がしたけれど、もう一歩入り込めなかった。
素敵な物語ではあるのだけれども。

(読了日:14/8/16)

長野まゆみ『テレヴィジョン・シティ〈下〉』
出版社: 河出書房新社 (1996/07)

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