東野圭吾『マスカレード・イブ』

東野圭吾『マスカレード・イブ』

『マスカレード・ホテル』の前日譚。
後に潜入捜査でコンビとなるふたりが出会う前の短編。
ホテルクラークで働く山岸尚美と刑事登用されたばかりの新田浩介それぞれが遭遇した事件。
表題作ではニアミスがあるものの出会うことはない。
前作を読んだのが数年前のため記憶が遠いのだが、時系列を遡るが『マスカレード・ホテル』から読んでふたりのパーソナリティを把握しておくのも面白い読み方ではないかな、と思う。

『それぞれの仮面』
珍しく人が死なないミステリ。
クラーク係に異動したばかりの尚美は大学時代の恋人と再会し、とある女性消失事件の謎に挑む。
女性が消えたことだけでなくもうひとつの嘘も仕掛けるのが物語の厚みになっている。

『ルーキー登場』
刑事となった新田の最初の事件。
タイトルは安っぽいのだが、事件のからくりは長編にも耐えそうな濃いものだった。
早い段階で結末は読めるのだが、自信家のルーキーが最初に遭遇した犯罪者としてはふさわしい印象。

『仮面と覆面』
再び尚美が主人公。こちらも人が死なない話。
ホテルにやってきた覆面美少女作家のおっかけ集団。執筆のためホテルに滞在する作家に会いたいと不穏な行動を取るおっかけをかわしていくのが筋。
あらすじにするとシンプルなのだが、ホテルという舞台をうまく使った展開となっている。
覆面作家の正体についてどんでん返しが待っていて、最後まで読者を良い意味で裏切ろうとする仕掛けはうまいなあと思う。

『マスカレード・イブ』
大学教授殺人事件の捜査に加わった新田。
最重要容疑者は事件の日大阪にいたというアリバイがあった。だが男は自分のアリバイを強固にしてくれるはずの密会していた愛人の正体を明かさない。
容疑者が泊まったホテルで尚美が働いており、彼女が与えたヒントから事件解決の糸口が見つかる。
本格ミステリファンには邪道だと言われがちな、読者に明かされない事件解決のための重要なヒントが終盤に明かされる。東野圭吾らしいと思うけど。

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尚美のパートはある種のお仕事小説とも言える。ちょっと2時間ドラマ的な図々しさを感じてしまうのだが、ホテルマンの職業意識が物語にうまく取り入れられている。
大きな感動や心の揺れはないのだがエンタテイメントとしては一級品である。
重厚さを求めたら物足りないが、ミステリとしてサクッと楽しく読める。
『仮面と覆面』以外は悪女が事件の鍵を握り、とことん嫌らしい存在となるのだが、何か恨みがあるのだろうかと思ってしまった。

しかし、男女ペアのミステリということでシリーズ化に選ばれたのか。
ミステリというよりはエンタテイメントとして読んだほうが楽しめるのではないだろうか。
毎度思うのだがそろそろ重い話が読みたい。

(読了日:14/8/27)

東野圭吾『マスカレード・イブ』
出版社: 集英社 (2014/8/21)

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