櫛木理宇『避雷針の夏』

櫛木理宇『避雷針の夏』

これまでに少なくない量の本を読んできたつもりだけれど、これだけ主人公をはじめとする登場人物全員最後までクズだった物語はない気がする。

明記されていないが、『赤と白』と同じく新潟を舞台にしたサスペンス。
睦間という田舎町は濃厚な人間関係と男尊女卑が根強く残っている。
主人公の梅宮は痴呆で介護が必要な実母のためという名目で縁もゆかりもない睦間にやってきた。
妻との関係は破綻しており、家にもろくに帰らない。W不倫関係の同僚とのメールだけを楽しみにしている。

町のはずれで居酒屋を経営する女が過去に夫を殺したという噂を聞き、彼女を取り巻く諸々の事件から睦間の異様さが明らかになっていく。

主人公は梅宮なのだろうが、彼自信は睦間に訪れる崩壊の中枢にいない点が面白い。
梅宮は家族・職場での関係が悪化していき、とうとうこれ以上逃げられないと気づく。
同時に町は様々な思惑が絡まり合い、ひとつひとつの悪意からバランスが崩れていく。
梅宮が町の異常事態に対して何らかの役割を果たし、成長していくのかとおもいきや本当に最後の最後、ぎりぎりまで自分勝手で最悪な男であった。

ストーリーも面白いし先が気になって読ませる仕掛けができているのだが、もう読みたくないと思うくらいに出てくる人間人間強い不快感を与えてくる。
ずっと気分が悪いという、面白い面白くないという基準とはまた別の感覚を覚える稀有な作品だと思う。

犯罪者のルポが好きな人は好きなのではないか。
それにしても最悪な気分になるけど。

(読了日:14/10/19)

櫛木理宇『避雷針の夏』
出版社: 光文社 (2014/4/18)

Pocket