窪美澄『水やりはいつも深夜だけど』

窪美澄『水やりはいつも深夜だけど』

とある新興高級住宅地を舞台とした短篇集。
物語に出てくる子供たちが、教育熱心な親が集まる幼稚園に通っているというのが共通点だが、物語同士の繋がりはない。最後の話以外は幼稚園児の子を持つ父母が主人公。
結婚生活や育児にまつわるネガティブな状態からスタートするためもっと破滅的な話を想像していたけれど、どれも未来に希望を持たせるエンディングだったので年末年始にふさわしい前向きな読後感を得られるだろう。
ただし8割くらいつらい状況である。これで結婚したくはならないだろうと思われるため、結婚して子育てしている人が読むとよいのではないだろうか。

『ちらめくポーチュラカ』
ど田舎で生まれ育ち、同級生たちよりも美しく聡明だったことでいじめを受けることになった主人公。
いじめから逃れ上京してからは安定した日々を過ごしていたが、人から悪意を向けられるのではないかと怯えながら暮らしている。
結婚し専業主婦になってから幼稚園のママ友との付き合いに疲弊していき、女性だけのネットワークの中から逃れないことに絶望感を覚えている。

『サボテンの咆哮』
妻が産後鬱になったことの罪悪感から妻や義理の両親へ強くでられなくなり、鬱屈を抱えている夫。息子との関係もぎくしゃくしてしまう。
義理家族との関係がうまくいかず離婚した知り合いがポロポロいるので、あーしんどいなーという話であった。
ハッピーエンドなんだけど主人公は本質的に救われるのか?疑問が残る。

『ゲンノショウコ』
精神障害者の妹を持つため、自分の娘も障害があるのではないかという疑念が拭いきれずにいる専業主婦。

『砂のないテラリウム』
できちゃった結婚をした妻は付き合っている当時は自分に依存し、すべての関心を向けていてくれたのに、子供が生まれてからは自動的に母親になってしまった。
そのことに寂しさを感じつつ、夫や父としての役割を果たしきれない主人公は、合コンで出会った女と浮気をしそうになる。
まとめると身勝手な男であるが、弱さや狡さが一番リアルな主人公だった。

『かそけきサンカヨウ』
3歳の頃に母が出ていき、父とふたりで暮らしている主人公。
自立することが求められしっかり者の高校生になったが、父が子持ちの女と再婚し4人で暮らすことになる。
義母との関係や実母への思い、父との関係、恋人未満の男友達など色々要素を詰め込んでいるけどすっきりまとまっていた。
5話の中でちょっと毛色が違う話である。
主人公たち家族はもちろんだが、豊富な脇役の生き様や考え方が物語を豊かにしている。

(読了日:14/12/27)

窪美澄『水やりはいつも深夜だけど』
出版社: KADOKAWA/角川書店 (2014/11/14)

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