東野圭吾『ラプラスの魔女』

東野圭吾『ラプラスの魔女』

東野圭吾のミステリは何系統かあるけれど、タイトルから察せられる通り今回は理系でかつ平均を超越した能力を扱っていた(ここが物語のキモなのだが)。

登場人物が非常に多く、複数のラインで物語が展開する。しかも場面展開が早いのだが、混乱なく読み進められるのがさすがのうまさ。
サクサク進むのだが、登場人物誰にも感情移入をしにくいというさらっとした感があり、特に残るものがなかった。
ここしばらくずっと言っている気がするけどもっと骨のあるものを書いて欲しい。

物語の発端となるのは、2箇所の温泉地で起こった硫化水素中毒事故。
1人目の被害者である映像プロデューサーの母親から、
「新妻に息子が殺されるかもしれない」
と相談を受けていた刑事が捜査を始める。

また、風評被害をおさえたい温泉地から調査を依頼された学者は、2件の事故を繋ぐ謎の女・円華と出会う。
学者は独自に関係者を調べる中で、2件の被害者と繋がる映画監督の存在と、彼の長女が硫化水素自殺を図っていることを知る。
自殺に巻き込まれ植物状態になった映画監督の長男と円華の繋がりがわかり、中盤で謎の1つである円華の「超能力」の正体が明かされる。

2件の硫化水素事故、映画監督の長女の自殺、円華の正体など複数の謎が絡み合って進むため、途中かなり風呂敷が広がるのだが綺麗に収束していくのがさすがの手腕。
東野圭吾は伏線の張り方が絶妙、「なんかこれヒントかも」とにおわせるさじ加減が天才的。
ストレスがかかり過ぎない程度に意味深さを引っ張り、全てをつなげる。
ただ破綻もない変わりに残るものがない、よくできた2時間ドラマのようできっとこうして記録を残していないと忘れてしまうだろう。

ミステリ作品としてレベルは高いのだが、そのテクニックを超えた部分を私は読みたいんだよ、と今回はまた思ってしまった。

(読了日:15/5/15)

東野圭吾『ラプラスの魔女』
出版社: KADOKAWA/角川書店 (2015/5/15)

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