大島真寿美『かなしみの場所』

大島真寿美『かなしみの場所』

主人公の果那は寝言が原因で夫と離婚し、雑貨作りの小商いをしながら実家で暮らしている。
人に寝言を聞かれる恐怖心からか実家で眠れなくなってしまったが、雑貨を卸している「梅屋」の奥の小部屋では熟睡できるので、頻繁に梅屋に眠りに通っていた。

幼いころに「天使のおじさん」に誘拐された記憶を持ち、いつか「誘拐犯」が自分の前に現れるのではないかという期待を持っている果那。

話としては梅屋のバイトのみなみちゃんや、近所の人、そして両親や伯母と過ごす中で、「誘拐事件」の真相を知るという展開である。

離婚の原因にもなってしまった、心の引っかかり続ける「天使のおじさん」の正体を知ることで、過去を乗り越える、という、よくありがちな傷ついたアラサー女性再生物語である。

200ページと短いのだが、テンポがよくなく、だらっとしてしまった印象。
なんだかずっと薄味なのである。すべてが静かで、穏やかで淡々としている。
こういう雰囲気の小説は結構あるのだが、なにかが決定的に「面白い」と「面白くない」を分ける。
しかし明確にこれが原因でダメだ、ということでもなく、全てが少しずつ足りない感じ。

主人公以外にも個性的で、語るべき過去を持っている登場人物が多いのだが、なにひとつラストまでにしっくり収まっていない感が残る。

2004年に単行本が出て、10年文庫化されなかった理由がよくわかる。
良い意味でも悪い意味でも、ひっかかるものがないのである。

こういう決定打のない面白味のなさって、一番不幸だと感じる。

(読了日:15/5/17)

大島真寿美『かなしみの場所』
出版社: KADOKAWA/角川書店 (2015/2/25)

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