三木笙子『怪盗の伴走者』

三木笙子『怪盗の伴走者』

〈帝都探偵絵図〉シリーズ4作目。久しぶりの新刊。
今回は短編2本、中編1本という構成。
短編が前振りの形となっている。
高広たちも出てくるのだが、怪盗ロータスと彼を追う検事・安西のスピンオフに近い展開。
なんだかふたりの愛に読者も高広も振り回された感があるのだが。
相変わらず腐女子の喜びそうな設定と展開である。

表題作である中編の『怪盗の伴走者』は高広が語り手となり、ロータスの起こす事件の謎解きになるが、短編2本がその前日譚となっている。
ロータスがまだ「蓮」と呼ばれる少年だった頃、彼と出会った当時の検事・安西が主人公となり、2人が遭遇した事件を解決する。

『伴走者』はふたりの出会いと最初の事件。
米の相場操作をテーマに、蓮が機転の聞く少年だということを表した一作。

『反魂蝶』は、高名な蝶蒐集家が巻き込まれたなりすまし詐欺の解決を図る。

本格ミステリとは言えない、ありがちなトリックではあるのだが、物語として魅力的、死語だけどジュブナイル小説っていう風情である。
蓮が仕掛けた騙しのトリックと本筋の事件の2重構造となっていてエンタテイメントとして質が高い。

表題作の『怪盗の伴走者』とは安西自身を指す。
何者にも縛られず、高い能力を持ち飄々と生きる蓮と対等に渡り合えると思っていた。しかし、蓮と過ごす時間が増えるに連れ、だんだんと引け目を覚えるようになり、自ら蓮の元を離れることを選んだ安西だが、迷いと後悔を全編引きずっている。

この物語は、時計塔にある油絵を盗もうとするロータスの計画を安西がどう阻むか、が軸となっている。
しかし本当の謎は「怪盗は何を盗もうとして、どうやって実行するか」
という点。
終わってみれば壮大ないちゃつきを見せられた感があるのだが、耽美小説に抵抗がない方にはよいスパイスではないだろうか。

刊行のペースは遅いし、やはり文章があまりうまくないなあというのは思ってしまうのだが、ミステリエンタメ小説としては非常に面白いシリーズである。
次も期待。

(読了日:15/5/20)

三木笙子『怪盗の伴走者』
出版社: 東京創元社 (2015/4/27)

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