三木笙子『人魚は空に還る』

三木笙子『人魚は空に還る』

雑誌記者の高広と、仕事相手で友人でもある美貌の天才絵師・礼のコンビがさまざまな事件を解決するミステリ。
デビュー作の短編4作と、文庫化にあたり礼のキャラクタを深めるエピソードが追加されている。

行方不明の兄を探す小学生の手伝いをする第一作『点灯人』で主要人物が出切って、伏線にしてもよかったと思う高広の出自が明らかになり、彼は浅見光彦みたいな立場なのだなとわかる。
この設定で多少の都合のよさは黙認され、大掛かりな事件に携わる素地完成。よくできている。

消えた真珠の謎を追う『真珠生成』は、誰が真珠を盗んだのかという謎の核心と真珠というモノが生成される過程をうまーく絡めている。

『人魚は空に還る』は見世物一座の披露する”人魚”の正体に迫る。
かなり風情のある情景が浮かぶ。
そして一座の座長の友人で、高広とは仕事仲間の作家が終わりに小川未明であることが明かされる。

『怪盗ロータス』は相場操作や違法賭博に絡む一番大がかりな話。
フィナーレという派手さはあるけど物語としては一番普通かも。

表紙もこんなだし、高広と礼の設定的に腐女子狙いでそういうのを匂わせる感じ。
分かりやすい主人公にベタな展開で本格ミステリというよりラノベ寄りの印象はあるけれど、時代設定もあり風流な土台があるので軽薄な感じがしないのがよい。
小川未明や柳田国男、モネなどの人物がちらりと出てきてにやりとする仕掛けもあり。
一見、探偵役になりがちな礼があくまで高広の助手という立場なのも新しい。

デビュー作とのことで、ベテランさんほどこなれた文章ではないものの雰囲気があって読みやすい。
振り返るとかなり構成が練りこまれているのだなと感心する。

既にシリーズ3巻目も出ているということで、息の長い作品になるのではないでしょうか。

(2012/5/21)

三木笙子『人魚は空に還る』
出版社: 東京創元社 (2011/10/28)

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