三木笙子『世界記憶コンクール』

三木笙子『世界記憶コンクール』

シリーズ2作目。
今回のテーマは親子の恩讐という感じか。
文庫化で追加された5話以外は親子関係が物語に深く根ざしている。

『世界記憶コンクール』
一目見ただけで文章を覚えることが出来る質屋の息子。
父に勧められ、新聞広告の求人に応募し記憶力を鍛える訓練を受けるが、その内容がいかにも怪しく雑誌記者の高広に相談を持ちかける。
ホームズの『赤毛商会』を下敷きにしている。
2組の親子を通して子を思う親の心も表現されていて味のある話である。
ミステリとしてはうまくいきすぎか。

今回は1巻と時系列が逆転している2話が収録されていて
『氷のような女』は高広の義父基博の話、
『生人形の涙』は高広と礼の出会い。

『氷のような女』
製氷とその販売が行われるようになった明治初期、安全基準に満たない悪水氷流通の黒幕を高広の義父基博が探る。
基博は高広よりも一枚も二枚も上手なひとである。
ほのかに恋愛要素もあり。

『生人形の涙』
かつて日本に滞在していたイギリス貴族が若かりし頃遭遇した”動く人形”の謎と、
30年後の(この本で言う)現在、貴族の勲章を盗んだ相手を見つけ出し、在り処を探り出すという2つの事件を高広が解決する話。
動く人形の謎は切ない展開。
ハッピーエンドかは微妙なところ…。
現在の話はこれまたホームズの『ボヘミアの醜聞』に着想を得ている。
動く人形のトリックを使って隠された勲章を探すという繋がりはおみごと。
相変わらずうまくいきすぎだけど。

『黄金の日々』は第1作で出てきた少年が主人公となり謎解きをする変り種。
違った視点で面白かったものの、犯人を疑った理由がちょっと切ない。彼はいつか報われるのだろうか。

『月と竹の物語』
白昼堂々小間物屋のディスプレイから金塊を盗んだ犯人を探す。
文庫化で追加されたエピソードで短いお話。高広の礼への愛を垣間見る回。
礼はかぐや姫ですか、そうですか。
確かに美しく、高広に謎解きとホームズの新作の翻訳をねだる姿はかぐや姫でございます。

今回礼の影はかなり薄い。
シリーズ全体としての動きは緩やかである。
ミステリとしては平凡だけれど物語としてはよい。

今回から各話に表紙がついたのがよかった。
(読了日:12/5/23)

三木笙子『世界記憶コンクール』
出版社: 東京創元社 (2012/5/18)

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