湊かなえ『絶唱』

湊かなえ『絶唱』

ストーリーも文章も、湊かなえっぽくない作品だった。
湊かなえの小説は好きではないという人に向いているかもしれない。
日本から遠く離れたトンガに逃げてきた女たちが、過去と向き合う連作短編集である。
キーワードとなっているのは阪神大震災。
震災から20年が経ち、その日を境に失ったものや、こじれてしまった人生を見つめなおす。

『楽園』
誰にも告げずにトンガへやって来た女子大生の毬絵。
大学教授の母親による歪んた愛情を押し付けられ、震災で死んだ双子の妹・雪絵として育てられた毬絵は、自分を取り戻し毬絵として生き直すためにトンガへやってくる。
他の短編と比較し、双子は本当に震災で入れ替わったのか?その理由は?という部分でミステリ要素あり。

『約束』
2年間、海外協力隊のメンバーとしてトンガへやって来た家庭科教師の理恵子。日本から遊びに来た婚約者へ、婚約解消を告げる3日間の物語である。
恋人への小さなわだかまりが積み上がっていく回想をはさみ、最後はどういう結論を出すのか。
『楽園』より時系列的に前になっており、帰国後彼女の教え子が毬絵という設定で、『楽園』の中で物語の後の理恵子がかいま見られる。

『太陽』
『楽園』と同じ時間軸で展開し、毬絵が出会った母娘連れが、どうしてトンガへやって来たのかわかる構造になっている。
『楽園』ではどうしようもない母親として描かれていた女の別の面が見られる。

『絶唱』
震災で生き残った罪悪感からトンガへ逃げてきた主人公が、現地に住む日本人の尚美とのふれあいを通して自分を開放していくという流れ。
震災前後の物語が間に挟まる入れ子構造。
長い独白というかメッセージ性の強い話だった。
あらすじにしてみると悪くない気もするけれど、物語として冗長な部分が多くまどろっこしいなと感じた。
それに個人的にはどうしてトンガ?という部分が引っかかって気が散ってしまった。作者の個人的な思い入れなのだろう。
湊かなえらしさはないなあ、という印象が一番強い。
角田光代とか好きな人はマッチしそうという想像。

(読了日:15/7/25)

湊かなえ『絶唱』
出版社: 新潮社 (2015/1/22)

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