石田千『役たたず、』

石田千『役たたず、』

東京の下町で一人暮らし、飲み歩きと相撲、競馬が好きな40代の作家のエッセイである。
文章はさらさらと読みやすいのだが軽すぎず、年の割に老けて感じる。全てに一歩引いた視点で達観しているのか、浮ついたところが無いからだろうか。文章も内容も21世紀感がとても乏しい。

1つ1つ長めのエッセイで、身の回りで起きたできごとを起点のエピソードにしてあっちへ行ったりこっちへ来たりして話が戻ってくる。短編小説のように見事な構成。

湯たんぽをきっかけに語られる、マンネリ感が人生に与えるもの。
若くして亡くなった友人との思い出や、教師から教わったこと、震災をきっかけにあらためて考えなおす他者と関わりながら生きることなど。

ともすれば説教臭くもなりがちなことも、等身大で語られるせいかまったく押し付けがましくも偽善的でもなく、そういう生き方も大切だよねと思わされる。

日々酒と美味しい食べ物を楽しみに生き、趣味は踏切を眺めること(最近の高架化や地中化を寂しく思っている)。
40を過ぎても独身で結婚の気配もなく、それも自分のような女はしかたがないと受け入れている。
世間一般の女の幸せという定形からすれば、外れた場所にいるのだが、それを認めつつも自虐的だけど自分を卑下していないところが実に爽やかである。

(読了日:15/9/6)

石田千『役たたず』
出版社: 光文社 (2013/3/15)

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