クリスティーナ・オルソン『シンデレラたちの罪』

クリスティーナ・オルソン『シンデレラたちの罪』

スウェーデンを舞台とした刑事物。

娘のリリアンと共にストックホルム行きの電車に乗っていたサラは、アクシデントで途中駅に置いてけぼりにされてしまう。
ストックホルム駅で合流するはずだった母娘だが、駅に着いた電車からリリアンは忽然と姿を消した。

ストックホルム市警の敏腕刑事アレックスとその部下のフレドリカ、ペードルはリリアンの行方を探すために捜査を開始する。
サラが別居中の夫に継続的にDVを受けていたことがわかり、夫が嫌がらせのためにリリアンを連れ去ったのではないかと推理するが、リリアンが死体で見つかり、新たな誘拐が発生したことで事件の姿が変わっていく。

500ページと長く、場面がコロコロ変わり登場人物も多いのだが、混乱することなく読むことができたのは骨組みがしっかりしているからだと思う。
ミステリでは読者=探偵役であり、情報量は同じであることが多いが、本作は読者の方がより多くの情報を提供されている。

読者にはリリアンを誘拐した犯人が早い段階から提示され、「男は何者なのか」、「男に”人形”と呼ばれる女はどんな関係なのか」という部分が謎となる。
一方、フレドリカをはじめ刑事たちは、姿をくらましたサラの夫を容疑者として追っていく。
このとき読者は「夫は関係ないだろう」とわかりつつ、どんな役割を与えられるのかと想像しながら読む。
刑事たちが得る情報も、読者はもう一歩深いところまで想像が膨らむ。
この非対称性をうまく利用して読者をミスリードする仕掛けも綺麗にハマっていた。

ただ、ところどころ唐突すぎる展開や、飛躍があったので謎解きをしたい人にはイマイチかもしれない。
行き着いた犯人も唐突だからミステリとは言えない感。刑事物のサスペンスとしてはほどよい緊張感があった。

そしてフレドリカやペードルの過去・私生活についても紙面が割かれている。
そのため事件はなかなか進展しないのでその点まどろっこしいと思うか、世界観が深まると思うかは好みの問題かもしれない。

個人的にフレドリカをもっと全面に押し出してもいいのではないかと感じた。推理モノは探偵役が明確な方が好み。

翻訳物はめったに読まないのだが、これはなかなかおもしろかった。
ただし、やはり書き手の背負っている国や文化、宗教のバックグラウンドを把握していないと、作品世界の魅力すべてを味わうことはできないだろうな、と感じてしまうのである。

(読了日:15/9/12)

クリスティーナ・オルソン『シンデレラたちの罪』
出版社: 東京創元社 (2015/8/12)

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