石持浅海『凪の司祭』

石持浅海『凪の司祭』

この時期に読むのはどうだろうと頭の片隅で思ってしまう、無差別テロモノである。

ゲリラ豪雨による事故で恋人を亡くした百代は、社会への復讐のため汐留のビルで生物兵器による無差別殺人を決意する。
百代がアルバイトをしている喫茶店の常連客5人は『五人委員会』を結成し、それぞれの専門知識を提供し、その計画を後押しすることに。
テロ行為を複数の視点からリアルタイムに描いていく。

物語はテロ決行の朝、百代を喫茶店から送り出すところからはじまる。
百代を見送った後、喫茶店に来なかった『五人委員会』のうちの1人、木下の家を訪ねた4人は、木下の死体を発見する。
テロの実行に関わらないはずの協力者たちだったが、不測の事態に計画を中止させようと、百代を止めるために標的となるビルへ向かう。

犯人も犯人の目的も明確であるから、殺人をエンタメ化している悪趣味な物語だ。
生理的にこういう話は受け付けないという人も多いだろう。
石持浅海の愛読者ならこの点了承済みだろうけど。綾辻行人の『殺人鬼』や貴志祐介の『悪の教典』あたりを楽しめた人なら面白いのではないだろうか。

どんでん返しのひとつやふたつあるかと思えば最後までパニック殺戮系で終わってしまったのが肩透かし感がある。
また百代の動機は理不尽極まりなく、賛同して手を貸した5人も、見て見ぬふりをした喫茶店の夫婦もリアルではないのだけれど、その空虚な現実感の無さが、理由のない悪意と暴力というものを際立たせている気がした。

ラストの意味深さもなかなか味がある。

(読了日:15/11/17)

石持浅海『凪の司祭』
出版社: 幻冬舎 (2015/10/22)

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