麻耶雄嵩『さよなら神様』

麻耶雄嵩『さよなら神様』

未だに根強く語られる『神様ゲーム』の続編的一冊。
前作は長編だったが今回は小学五年生の桑町淳(くわまちじゅん)の周辺で起こる殺人事件をめぐる連作短編である。

「神様」と呼ばれるイケメン転校生鈴木少年が前作に引き続き登場。
毎回、鈴木少年が殺人事件の犯人を淳に教えるところから物語ははじまる。
淳が「神様」鈴木の告げた犯人が本当に殺人を犯したのかを検証するという倒叙型のミステリである。
ほとんどは犯人のアリバイ崩し。
個人的に本格推理だろうがサスペンスだろうが気にしないのだが、凝ったレトリックと、屁理屈にも思える真相は、90年〜ブームになった本格ミステリの要素を色濃く感じて懐かしい気分である。

※以下ネタバレを含む感想

『少年探偵団と神様』
田舎町と思われる小学校に通う淳は、担任の美旗先生に容疑がかかる殺人事件の犯人を鈴木少年に尋ねる。
答えはクラスメイトであり、同じ久遠小探偵団の一員である上林の父親だという宣告を受ける。

『アリバイ崩し』
次の事件の被害者は、淳が拾った子犬の里親となった未亡人。
鈴木松年の宣告した犯人はまたもや久遠小探偵団のメンバー、丸山の母親。
フォーマットは1話と同じなのだが、結末の部分でひねってきた。

『ダムからの遠い道』
第1話で殺人事件の容疑者となった美旗先生だが、この話では本当に殺人事件の犯人として宣告される。

『バレンタイン昔語り』
中だるみしそうなところに、大きな仕掛けを持ってきた。
少年と描かれていた淳は実は女の子だったのである。
確かに微妙にひっかかる場面があったのではあるが。
無理はあるが、ミステリではよくあるレトリックでもある。
淳が1年前に遭遇した友人の不審死と、現在の事件がシンクロする形。
「神様による犯人の宣告」を逆手に取ったトリックである。非常に巧み。

『比土との対決』
麻耶雄嵩は主人公の探偵役も殺す作家なのだが、ヒロイン的位置付の少女を殺してしまった。
淳の幼なじみである小夜子が殺され、神様・鈴木は久遠小探偵団のメンバー、比土優子の犯行だと宣告する。

『さよなら、神様』
第5話を受け、最終話は棚上げされた事件の総決算的展開。
タイトルはそう繋がるのか、という壮大な仕掛けである。

私的にはWhydunitの作品が好きなので特に物語として心動かされることはなかったのだが、たまにはこういう話も頭が切り替わってよい。
推理小説を推理して読まない派には、新鮮な驚きのある作品であった。
こういうのにイライラするひともいそうであるけれど。

私的には神様ゲームよりもスッキリした読後感で好き。

(読了日:15/11/28)

麻耶雄嵩『さよなら神様』
出版社: 文藝春秋 (2014/8/6)

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