恒川光太郎『ヘブンメイカー スタープレイヤー (2)』

恒川光太郎『ヘブンメイカー スタープレイヤー (2)』

シリーズ2作目。
前作スタープレイヤーのラストはこの先の旅路を感じるものだったので続編だろうかと思っていたが、設定や世界観は同じなもののまったく新しい物語であった。
時間的にも20年ほど遡っている。

前作の主人公と同じく、謎の白い大男の籤引きで一等を引いた男子大学生の佐伯は、スタープレイヤーとなり青い砂の砂漠が広がる異世界に飛ばされる。
10個の願いを叶えられる能力を使い、佐伯は生まれ育った神奈川県藤沢市の街を出現させる。
そして、中学時代に好意を寄せていた律子を呼び寄せ、「謎の世界に二人だけ取り残された」状況を演出する。

その後、二人は「藤沢」を出ることになり、佐伯の旅がはじまる。

佐伯の物語と平行して、「ヘブン」と呼ばれる街を舞台にした話も展開する。
すっかり忘れていたのだが、前作の主人公は最終的にこの「ヘブン」を目指すのだった。
ヘブンの章で主人公的な立場となるのは、佐伯の中学時代の友達であり、17歳で交通事故死した鐘松。
トラックに轢かれそうになった鐘松が目覚めるとそこは「死者の国」で、そこにいる三千人の人々はみな何かしらの理由で死亡した人たちだった。
鐘松たちは状況を受け入れ、「ヘブン」と名付けた異世界で新しい生活をはじめる。

佐伯の物語と「ヘブン」はどんな関わりがあり、どこで交わるかが全体の大きな謎となって引っ張っていく。

前作同様、血なまぐさい展開もあるのだが、だいぶんおとなしい印象。
佐伯は主人公にしては淡白な人物で、特に後半になるにつれ存在感が薄くなっていく。

佐伯は律子との人生を異世界でやり直そうとするが、やはりうまく行かない。
結局佐伯は逃げ続けたのだろうか、と漠然と考えてしまう。
幾人もフォーカスを当てられる魅力的な登場人物がいるので、全体としてはハッピーエンドな印象だが、佐伯の物語と考えるとどうだろうか。
佐伯の最後の選択を把握し、これがシリーズである必要性がわかった。

500ページと分厚いのだが、文字が大きく1ページの密度が低いのでさらさら読める。
細々とした伏線や意外などんでん返しもあり、巧みなファンタジーである。

恒川光太郎の話の中では取り立てて素晴らしいもんではないのだが、やはり天才だと思う。
現在作品をコンスタントに出しているファンタジー作家としては個人的にトップスリーに入る。

(読了日:15/12/2)

恒川光太郎『ヘブンメイカー スタープレイヤー (2)』
出版社: KADOKAWA/角川書店 (2015/12/2)

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