浦賀和宏『ふたりの果て/ハーフウェイ・ハウスの殺人 』

浦賀和宏『ふたりの果て/ハーフウェイ・ハウスの殺人 』

2016年の読み始め。

何冊か読んでいる浦賀和宏氏。
仕掛けありきで物語としてはフツー、ってイメージがあるのだが、今回もその評価変わらず。
表紙は物語への期待を膨らませるものなのだが、やはりいつものごとくキャラが弱いというか共感性が乏しいので、今一歩「物語」的な感動が薄い。
今回は小説ならではの仕掛けだったが、その設定を維持するためにもキャラクタの動きや感情に違和感がある結果となったのかもしれない。
トリックを楽しむミステリ好きにはよいかと思うが、推理モノというには煮え切らない結末でもある。

ふたりの果て/ハーフウェイ・ハウスの殺人とタイトルが区切られている通り、健一とアヤコ2人のストーリーがそれぞれ進行する。

物語はアヤコの住む『ハーフウェイ・ハウス』と呼ばれる、箱根の山の中にある共同生活施設からはじまる。
22名の生徒と園長、2名の教師の25人が住むハーフウェイ・ハウスは、アヤコが「オベリスク」と名付けた柱が結界のように設置され、生徒は敷地外に出ることが許されない。
本当に自分たちが外に出ることが出来ないのか懐疑的なアヤコ含む仲良し4人グループは探索を続けるが、ある日そのうちのひとりがオベリスクの外に出たところ気絶したという事件が起きる。

ファンタジーかSFのような雰囲気のアヤコの章に対して、健一のパートはがらりと変わる。
職を転々としながら風俗ライターに落ち着いた健一は、大企業の社長の私生児でやさぐれた人生を送ってきたが、ある日実の父親が訪ねてきて、跡継ぎとして会社に入らないかと打診される。

異母妹である彩子が事故により障害を負ったことを知る健一は、彩子がどこにいるのかを探ろうとする。

ここで、ハーフウェイ・ハウスに住むアヤコが健一の探す彩子と同一人物ではないか、とわかる。
父親から、事故により彩子は26歳から12歳の子どもに退行しているという事実が明かされるが、その情報により、アヤコの発言やハーフウェイ・ハウスでのやりとりの整合がついていく。

健一は彩子を探すが、アヤコのパートでは一足早くふたりは出会い、アヤコは健一に惹かれていく。
そしてタイトルにあるように、ハーフウェイ・ハウスで連続殺人が起きる。

誰が犯人なのか、健一は彩子に出会えるのか、そして「アヤコは本当はどんな状態なのか」という複数の謎が進行していく。また、顕在化していない「事件」が後々明らかになっていく。
畳み掛けるような展開は良く出来ているものの、肝心要の「殺人」部分の仕掛けと、アヤコの状態があまりに非科学的すぎて、健一と彩子をとりまく人間関係のしがらみという物語を面白くする部分への意識が薄くなる。

なんで健一がここまで彩子の行方を探そうとするのか?不可解だったが、最後にその理由がわかり、何層にも積み上げられた構成であるとわかるのだが、何か物足りない気がするのはキャラクタの誰にも感情移入できないからかもしれない。
構成のために物語性を犠牲にした感がある。

ひとつひとつの謎は解かれたのだが、全体を俯瞰してみて、本当のことはなんなのか?イマイチすっきりしない幕切れであった。
何が本当に起きたことなのか、それがこの物語の一番大きな謎かもしれない。
そしてその解答は示されない。

 

振り返ってみると、2015年は「これだ!」という本に出会えなかった感が強い。
読書量が年々落ちているのも、読みたい本や作家を読み尽くした部分が大きい。
好きな作家がなかなか新刊を出さないことも問題だが、ぜひ新しい才能にも出会いたいところである。

(読了日:16/1/2)

浦賀和宏『ふたりの果て/ハーフウェイ・ハウスの殺人 』
出版社: 祥伝社 (2015/10/8)

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