桜木紫乃『霧 ウラル』

桜木紫乃『霧 ウラル』

昭和35年から40年代前半の根室を舞台とした物語。
主人公は地元の有力企業である河之辺水産の次女・珠生(たまき)。
両親に反発し、家を出て花街で芸姑をしていた珠生は、勤めている料亭で新興の水産会社を営む三浦の秘書、相羽に恋心を抱くようになる。
三浦の指図により賭博の罪を負って服役した相羽は、出所後に土建業をはじめるが、実際はヤクザ稼業。
珠生は相羽と結婚するが、幸せそうな描写はほとんどなく、夫婦のやりとりの分量も少ない。

表紙の雰囲気もあり、相羽との出会いからはじまるので恋愛物かと思ったが、珠生をはじめとする「女」の生き方を描いた物語だった。

珠生の姉・智鶴は凡庸な女に描かれていたが、政界を目指す運輸会社の跡取りと結婚し、すべてを操る立場となっていく。
物語が進むに連れ、珠生と智鶴の対立の構図となっていく。
政略結婚させられることに反発しつつも、自ら動くことはできない三女の早苗は物語の幕引きのきっかけをつくることになる。

ドラマチックな展開の割に、今ひとつ迫力というか厚みが足りなく感じるのは、物語が珠生の目に見える範囲だけで進んでいるからかもしれない。
もっと複雑で重厚なドラマとしても描けただろうし、三姉妹を中心に時代や家に振り回される女の人生を綴ってもよかったはずだ。
登場人物すべてが何を考えているのかはっきりしないせいで感情移入がしにくく、なんだか中途半端で物足りなかった。

(読了日:16/2/27)


桜木紫乃『霧 ウラル』
出版社: 小学館 (2015/9/24)

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