宇江佐真理『糸車』

宇江佐真理『糸車』

年末に乳がんで亡くなり、単行本が文庫となって刊行されてきている。
作者がいなくなれば続きが読めなくなるので二重につらいのだが、幸いにもこの作品は一冊で完結。

蝦夷松前藩の家老の妻・お絹は、在府中の夫の死の報せに江戸にやって来たが、夫はすでに骨となり元服前の一人息子は行方不明になっていた。

息子の行方を探すため江戸に残る決意をしたお絹は、深川の宇右衛門店で暮らし、行商で身を立てる。
お絹の夫の死の真相と息子の行方が全体を引っ張っている謎だが、6話の連作短編の形を取っており、各話のエピソードでお絹が深川に馴染んでいく様子や周囲の人達の交流が描かれている。

人情、商売、軽い毒もあり、宇江佐真理の時代小説の典型的なスタイル。
お絹を気にかける妻に先立たれた同心・持田との恋模様もあり、短いが中身の詰まった物語である。

ただ、個人的にはハッピーエンドが好きなので、結末には少しもやっとしてしまうのである。

(読了日:16/3/19)

宇江佐真理『糸車』
出版社: 集英社 (2016/1/20)

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