砂田麻美『一瞬の雲の切れ間に』

砂田麻美『一瞬の雲の切れ間に』

小学生の男の子が死亡した交通事故をきっかけとして人生が変わってしまった人々の連作短編集。
苦しみからの再生というありがちなパターンだが、春に読むには前向きな気持ちになれる爽やかな物語である。

出版社の派遣OLは、職場の編集者と不倫中。
不倫相手の妻が交通事故を起こし小学生を死なせたことで、3年続いた関係やこれからのことに思いを巡らせる。
適齢期の女性の漠然とした不安感の漂う1編。

2話目の主人公は事故死した少年の母親。
子供が死んで1年が過ぎ、だんだんと苦しみが和らいでいくことに罪悪感を感じている。

次の話は1話目のOLと不倫をしていた編集者が主人公。
妻が人身事故を起こした原因は自分にもあることに罪悪感を覚えながらも、うまくいかない妻との関係に鬱屈とした気持ちを抱えている。

4話は事故を起こした妻の話。
自分の犯した罪と向き合い、前に進んでいくというわかりやすいエンディングである。

最後はエピローグ的な1話。
2話の主人公である、母親に届いた手紙という形式。
まったく事件と関係ない内容だが最後に手紙が書かれた理由が明かされる。

作者のことはしらなかったが映画監督だそう。
他の映画監督や脚本家の小説もそうだが、文章的にはさほど凝ってないのに情報量が多いというか、映像的な広がりを感じる。
主人公たち以外の登場人物もディテイルが丁寧で立体的だ。
起承転結をはっきり感じる物語の構成になっている(欠点にもなりえるかもしれないけれど)。

映像出身のひとは、飽きさせず、惹きつける術を身に着けているので、それに文章力が加われば言うことなしの作品ができるのは当然である。

ただそこからもう一歩深く、心を掴むためには物語の力が必要で、テクニックではカバーできない。
いい話だったけど、どこかで読んだような話だという感覚はいなめない。

(読了日:16/4/10) 

砂田麻美『一瞬の雲の切れ間に』
出版社: ポプラ社 (2016/1/20)

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