真保裕一『赤毛のアンナ』

真保裕一『赤毛のアンナ』

久しぶりに真保裕一。

犯罪者を描くことは多いものの女性というのはほとんどないのでは。
そしてクライムミステリーというよりは人情モノである。
あらすじにある、青春サスペンスともまた違う気もするが。

タイトルにもなっている「アンナ」は、赤毛のアンに憧れ、暗い生い立ちにも負けず、明るく思いやりのある女の子だった。

アンナが施設にやってきてから15年が過ぎたある日、
アンナの育った児童養護施設に、アンナが人を刺したという連絡が入る。

アンナがなぜ恋人を刺したのかを、アンナと関わりのあった人々が調べるというのが本筋であるが、
時代を行きつ戻りつしてアンナの人生を振り返る形になっている。

章ごとに視点が変わるし、時代もダブりながら飛ぶので少し複雑な構成に感じるが後々重層感を感じる構成になっている。

児童養護施設の職員や、一緒に育った子どもたち、高校の同級生、別れた恋人などがそれぞれアンナのことを助けよう、彼女が罪に至ったことを解明しようと奔走する。
同時にそれぞれアンナに関する秘密と罪を抱えていて、アンナの事件の報せに暗い記憶がよみがえる。
登場人物たちはアンナの事件を調べる過程で、過去に起きた事件・出来事の真相を知り、
自ら不利益を被っても正義を貫いたアンナに罪悪感を超えて助けようとする。

正直なところアンナの罪の真相は肩透かし感のあるものだったが、物語の中にこのような謎がいくつも仕掛けられていて飽きない。
登場人物やエピソードにまったく無駄がなく、緻密なのにテンポが良い。
売れ線の勢いだけの作家とは違うなあ、としみじみした。

人間は善意と悪意が矛盾なく両立しているということを描くのが本当にうまいなあと思う。

(読了日:16/5/1)

真保裕一『赤毛のアンナ』
出版社: 徳間書店 (2016/1/29)

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