朝倉かすみ『少しだけ、おともだち』

朝倉かすみ『少しだけ、おともだち』

親友ではないけれど、ただのクラスメイトや同僚、顔見知り、おとなりさんよりはもう一歩距離の近い女同士をテーマとした短編集。
それぞれ30ページ程度ながら、密度が濃い。

『たからばこ』
幼稚園児のうてなが初めてみちるちゃんの家に遊びに行って家に帰るまでの短い話である。
この作品は限りなくうてなの一人称に近い三人称で書かれ、朝倉さんの作品でよく採用されている視点だけれど、うてなの母と義母のささやかな綱の引き合いや幼稚園児の間でも存在する微妙な力関係をうまく描いていて、短い物語ながらかなり含むものが多い作品である。
最後に用意された展開がなんとも後味悪い。これは必要だったのかよくわからない。

うてなの弟が生まれた日の描写や、死んだ母方の祖母の話など時間軸が行ったり来たりしてページ数の割にちゃんと読もうとすると時間がかかる。
そして朝倉さんの作品はちゃんと読まないと全く面白さがわからない。
その象徴的な作品が巻頭を飾り、これがうまく飲み込めないならたぶんこの一冊は合わないです。

『グリーティングカード』
珠美という友人との小学生から50歳になる現在になるまでの付き合いを、手紙をテーマにして綴った一篇。
主人公のまり子の存在とキャラクターが限りなく希釈されて読者と同化しているのが最後に効いていると思う。
珠美みたいな子、いたわ、というのが一番強い感情。
いたし、いる、こういう子。

『生方家の奥さん』
ほかの作品よりも友達という存在が薄い作品。
主人公は会社の金を使い込んでいて、それが同僚にバレ、これからどうしようかと途方に暮れている。
こういう破産系の話は本当に恐ろしい。
あちら側へ踏み込んでしまうのは、そういう機会があったかどうかだけで分かれるとしたら、いつ自分も落とし穴にハマるかわからない。
でも主人公が会社の金を使って買い物をする思考回路の描写は好き。

『チェーンウォレット』
駅構内にある菓子屋とかばん屋と人形屋に勤める3人がカラオケで語る。
会話を中心とした構成で終盤まで三人の心理描写は出てこない、そこがレトリックでオチになっている。
物語自体を楽しむよりも、なぜ三人はそれぞれにあんな会話を行ったのかと考えてみると、別の味がしてくるかも。

『ほうぼう』
新婚夫婦の話だと思って読んでいたらなんだかおかしい、と思い、何度か行きつ戻りつしてようやく趣旨がわかった。
このもやもやした感じが恐ろしさに変わると面白いのか、も。

『仔猫の目』
マンモスマンションに一人で住むバツイチの主人公が、結婚から離婚に至るまでの出来事や子供の頃の思い出を振り返る話。

『C女魂』
親世代が学生の頃からずっと偏差値が低く生徒の質もよくない高校だと定義されているC女で、7人の生徒がベルマーク運動を始める。
一体物語はどこへ流れているんだと思いながら読みすすめたけれど、最後は不覚にも泣けてきた。
だんだんひとつの方向へ収束していくという話はとても好きで、それをこの短い分量で書ききっているところがさすがである。

『今度、ゆっくり』
50代の司書二人が、音楽番組の観覧へ行くお話。
起伏の乏しい話しながら、締めにふさわしい温かな結末である。

たぶんこの「少しだけ友達」というのは女性独特の感覚ではないか。
各話の女同士の関係を表現するにはこれ以上ないタイトルではないかと読み終わってしみじみ思う。

 

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