石持浅海『この国。』

石持浅海『この国。』

長らく一党独裁政権が続くある国を舞台としたディストピア小説。
明治維新後、極端な社会主義と法治主義を貫いてきた21世紀の日本という風情、北朝鮮テイスト。

治安警察官の番匠が遭遇した事件を解決していく連作短編集。
あらすじと1話目の印象から番匠対松浦という構図で続くのかと想像したが、番匠が様々な事件を解決する形式だった。
『ハンギング・ゲーム』
反政府組織のリーダーの公開処刑当日、つつがなく処刑を完了しようとする番匠とリーダー奪還を目指す松浦の対決。
展開、オチ共にこれが一番スッキリ読み終わった。

『ドロッピング・ゲーム』
この国では能力に応じて進学する中学が決定され、その後の人生が決まる。
とある小学校で起きた児童転落死事件を番匠が解決するが、
海外からやってきた担任教師の視点で描かれているため存在薄め。

『ディフェンディング・ゲーム』
陸軍士官学校の生徒が他国の工作員による犯罪を防ぐため見回り業務を任される。
世界観の補強には必要な話なのだろうが、
解決する事件とネタがしょぼくて全体の説教臭さに勝てていない。

『エミグレイティング・ゲーム』
ある売春婦を買った客ばかりが連続して殺される事件を解決する。
しばらく脇役だった番匠の出番が増え、最終話への繋ぎにもなっている。

『エクスプレッシング・ゲーム』
松浦との再対決となる最終話。
1話と同じく、松浦の策略を次々突破していく構成。
ラストは推理の出来ない私にもバレバレの仕掛けだったし、
そもそも最初に不意打ち狙いで殺せただろうと思ったけれど、それではお話にならないしたくさん散りばめた伏線を回収する形で悪くはなかった。
ただ終わり方はこれでいいのか?微妙。
相変わらず全体的にうまく行きすぎ、という現実感のない展開も多いけれど、これも持ち味ということで許容出来る範囲。
SF設定の話は少ない気がするけれど小さな世界の完成度は高いのでこういう系統ももっと書けばいいと思う。

(読了日:2013/9/6)

 

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