篠田節子『家鳴り』

篠田節子『家鳴り』

篠田さんお得意の人間ホラー短編集。

『幻の穀物危機』
東京西部で大地震が発生し、生き残ろうとする人々が理性を失っていく様子を描いたパニック小説。
主人公は地震前に東京を離れ、別荘地(長野あたり?)でパン屋を営む男。
極端な話だと笑えないのが恐ろしい。
でも集団パニックを防ぐ方法ってないよなと途方に暮れてしまう。。

『やどかり』
教育センターで相談員を務める男が、家庭に問題のある少女と関わりを持ったことで破滅に進んでいく話。
主人公は愚かだけれど、だんだん追い詰められていく過程が恐ろしい。
オチはもっと最悪のものを想像していたから少々意外な形だった。

『操作手』
姑の介護をする主人公のもとに介護ロボットがやってくる。
ロボットと姑の関係はSF的展開をたどるものの、介護する側とされる側、家族の関係など人間ドラマの要素もたっぷり。
ただこういう種類の話は読んでいて重い気分になってしまう。

『春の便り』
老人病院を舞台としたファンタジックな話。
10ページ程度のショートストーリー。

『家鳴り』
精神的な問題から摂食障害を起こし、どんどん太っていく妻を描いているけれど、主人公である夫の病質的人格を想像したほうが恐ろしい。
食べ物、料理、食べる、綿密な描写が穏やかだけど怖い。

『水球』
不倫とリストラの人間ホラー。
最初から崩壊が見えている話ではあるものの、収録されている7篇の中で唯一かすかにでも灯りが見える物語。

『青らむ空のうつろのなかに』
家庭などに問題のある子供たちを集め共同生活を送らせる農場に、ネグレクトにより心を閉ざした少年がやってきたところから物語がはじまる。
家族の問題、いじめの問題などディープに描いている。
養豚場の豚と少年の関係など、途中からファンタジー的展開になっていくのがとても篠田節子だなと思った。
私は少々苦手な部類。

どの作品もとてもクリアでヴィヴィッドである。
その分逃げ場がなくて、読むとどっと疲れる。
面白い本だけど、ハッピーにはなれない。

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