窪美澄『雨のなまえ』

窪美澄『雨のなまえ』

雨の風景が絡む短篇を集めた一冊。
デビュー作以来のストレートな性表現が特に多いように感じた。
どの話も救いのない結末で、日常は綺麗に終わることなんてないというヒリヒリした感覚が残る。
報われることの少ない人生をどう生きていくのか、年をとるごとに難しさを感じる。

『雨のなまえ』
勤務先の設計事務所が倒産し大型家具店で働いている主人公は、
妊娠中の妻がいながら客として出会った女と不倫をする。
裕福な家庭で育った妻との価値観の違い、常に存在するズレが生々しい。
『記録的短時間大雨情報』
パート勤めをしているスーパーに入ってきた大学生アルバイトにほのかな恋心を抱く主婦の、報われない日常。
一番痛々しい話だった。
『雷放電』
不釣り合いなほど美しく出来た妻を得たサラリーマンの物語。
ミステリ仕立て、全体として現実感がない世界観のため、オチを理解するのに少し時間がかかった。
『ゆきひら』
いじめにより自殺した幼なじみを救えなかったというトラウマを抱えた中学教師。
転校してきた女子生徒に幼なじみの面影を重ね気にかける。
なんだこのラストは、と急転直下の予想外だった。
真実、何が起こったのか明確にはされず、本当のことはわからないけれど、どういう正解にしろ主人公は報われなさすぎていたたまれない。
『あたたかい雨の降水過程』
離婚し息子をひとりで育てると決めたシングルマザーのお話。
唯一良い方に未来が広がっていく感がある。

(読了日:13/11/3)

 

 

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