中脇初枝『きみはいい子』

中脇初枝『きみはいい子』

横浜のとある住宅地を舞台とした連作短編集。

『サンタさんの来ない家』
大学卒業後に配属された小学校で、学級崩壊させてしまった主人公。
翌年受け持ったクラスでもさまざまな問題が起きる。
先生の空回り具合が切ない。
主人公の気持ちが飾りなく描かれていて見ていて痛々しい限りである。
でもこんな先生、いたらいいなと思った。

『べっぴんさん』
自身が虐待された経験から、子供を虐待してしまう母親を描いた作品。
虐待にいたる描写が生々しくて、しかもある意味論理が通っていて恐ろしい。
印象的な話だったけれど、この分量では消化不良感がある。

『うそつき』
土地家屋調査士で、自営業だから保護者会や町内会などの役割を頼まれがちの主人公。
小学生の息子が連れてきた友人が虐待を受けていることに気づく。
解決しようと動くわけではなく、また本人に問い詰めることはない。
見てみぬ振りをしているとも言えるけれど、
子供のうそもごまかしも気づかない振りをして受け入れる主人公は、
戦うのとは別の強さと優しさを持っていると感じた。

『こんにちは、さようなら』
ひとりで暮らす老婆と自閉症の子供、その母親の物語。
割とベタな展開だったけれど、これが一番好きだったかも。

『うばすて山』
女性誌の編集長として忙しく働く独身の主人公に、
痴呆の母の面倒を見る妹から、数日母親を預かってくれと連絡が入る。
主人公が母との関係を見つめる一作。

どの話もよかった。
最終話は好きではなかったけれど、物語のテーマとして「老い」や「介護」というのが嫌いだから、という要素が強いので、総合的にいい本だと思う。

人物や心理描写をこれでもかと書き込む小説もよいけど、
こういうさらりとした文章で底が深い話も好き。

(読了日:12/11/30)

 

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