沢村凜『リフレイン』

沢村凜『リフレイン』

SF設定ながら、「正しい殺人は存在するのか」というとんでもない哲学的なテーマをぶちあげている。

地球以外の惑星にも人が住み、宇宙旅行が当たり前になっているという世界設定。
超高度な文明により科学技術は発展しているが、超能力とか超自然的なものは出てこないので、惑星をそのまま国に置き換えても違和感なく読める。

争いを続けていたアンタミア星域106の星が平和的統合に向かっている時代、宇宙船イフゲニア号が惑星間の移動中に故障、遭難する。
船は惑星メシアに不時着し、生き残った二百数十人は文明のない無人の惑星で生きるために行動しなくてはならなくなる。

各惑星のエリートが乗り合わせた宇宙船だったため、理性的に組織が形成され、生き残るため役割分担がなされ人々は生活を安定させていく。
物語の前半は遭難者たちが惑星メシアで作った”国家”イフゲニアでのサバイバル、出来事が描かれる。
これが最後まで続くかと思いきや、中盤で捜索隊がメシアに辿り着き、人々は故郷へ帰れることになった。

後半は一転して裁判もの。
イフゲニアのリーダーを務めた男が、遭難時に取った行動により母国で裁判にかけられる。
刑に服しようとするリーダーと、彼を信頼し愛する遭難仲間の綱の引き合い。

文章は緻密で冷静、淡々と積み上げる系。特に後半部は禅問答のようなことが繰り返され、この世界観に入り込めないとつまらなく感じるだろう。
私的には、正義と正義が対立するとこんなにも厄介なのかと悶々イライラしたが、一気に読めるくらい惹きつけられたし、考えさせられた。
最後までもやもやしている。
ラストをどう落とすのか、沢村さんの他の作品的に最悪の結末も考えていたが、
典型的なハッピーエンドパターンではないけどいい後味の終わり方だった。

この作品はファンタジーノベル大賞最終候補に残ったデビュー作。たぶん『黄金の王』が売れたから復刊になったのだと思う。
筆力と物語の厚みも去ることながら、こんなテーマに挑んだことに驚く。
正直とても楽しいとは言えない。
他の作品を読んでもそうだけれど、人間の心理、相反して成り立つ正義に強い関心がある人なんだなあと改めて思った。

気になるのは垣野内成美の装画。
吸血姫シリーズ大好きで垣野内さんの絵も好きだけど、この物語とキャラクタにしては線が細すぎて合っていないなという印象。

垣野内さんは田中芳樹の薬師寺涼子の装画を担当していたし、この物語が宇宙モノなのも相まって、妙に銀英伝のイメージが浮かんだ。

(読了日:13/11/19)

 

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