
セミナーレポート@星野リゾートビジネスセミナー⑤
星野リゾートビジネスセミナー:第5回 外資ホテルvs日本旅館 〜おもてなしをビジネスにする〜
受講日程:2013.11.13 11:00-16:00
いつの間にやら5回目に。
今回は”おもてなし”を軸として競争優位性を築く&自社の組織をリバイスしていくといった感じ。
タイトル的に差別化とかブランディングっぽい印象を得るけれど、中身は”おもてなし”の再考に近かった。
経営の合理化と最高のサービスを両立させることに、馴染めなさというか二枚舌的印象があり、それはまだ残っているけれど、質問にしっくりくる回答をいただいた。
私の疑問は、旅館業というのは古くからあるもので、いくら衰退しているとはいえ、その仕事にプライドを持って取り組んできた人がいるはず。それが経営再建となると、これまでの姿勢が否定されたように感じ働くモチベーションが無くなってしまうのでは、というもの。
バイト先でも収益があがらないから店をたたむことがあったけれど、現場の(ほとんどの)人はきちんと仕事をしてきたし、ホスピタリティもあったと思う。
利益が出ないというのは致命的な問題ではあるものの、じゃあ合理化すればいいじゃんって納得できるのかなーと考えていた。
例として出てきた、下駄箱係。百人のお客様の顔と靴を覚えてすぐに取り出せるというのは、甚だ不合理だけれどその仕事をプライドを持ってやってきたんじゃないか、という話。
回答としては、ホスピタリティの価値について現場で最後まで見れる仕組みがなかったのが原因で、
それ(昔ながらのサービス)がいいことだと教わっていっただけ(個人としてはとてもホスピタリティも能力もある)
→一生懸命やっていることが悪いのではなく、顧客は変わったと教えられない状況がよくない
ホスピタリティの押し付けというと聞こえは悪いけれど、提供側が良かれと思ってやっていることが市場のニーズに噛み合っているか、繰り返し確認しないとだんだんとずれてきてしまう、という考え方。
確かにそれはそうかも。
自分たちが一生懸命やっているものが相手に届いているのか考えなくてはいけない。
それはどの業界でも言えるし、できないことが衰退の一因となっているかもしれない(これまでうまくいってきた物を変えるのはとてもストレスだとは思うけど)
意識、教育だけでなく、これまでは経営としての問題もあった。
収益、CSの最適化の指標を持っていなかったから、満足度が計測しにくい。
自分たちのサービスと売上がきちんと連動しているか、はたまた筋違いなことをしていないかを振り返る定量的な基準がなかった。
働いている個人が悪いのではなく、変わっていく社会、制度に合わせて事業を再設計出来ないことが悪い。
生産性を上げることと人間を機械にしないことをどう両立させるのか、させられているのか?まだもやもやしている部分はあるけれどひとつの考え方を知った気がする。
やはりこのセミナーは単独でも学ぶところはあるけれど、やはり一連の流れで受けたほうが理解が深まると思う。点と点が繋がる感覚。
そして単に「勉強になった」だけじゃなく、少しもやもやとひっかかりが残るのもいいと思う。
なるほどだけではその場の感心で後には活かせない気がするから。
===以下メモ===
最初に自己紹介&ブレスト
お題① ”おもてなし”とはなにか
お題② ①を実現するために必要な資源はなにか
おもてなしについてチームで出た意見は
−相手が望む以上のレベルの満足を与えられるように行動すること
−自分と客として向かい合う
−ルールと逸脱した部分のおもてなしは存在する=自分で裁量があるか
−こちらからアプローチする、期待を上回る
−相手の期待を想像し、それに応えた上でプラスαのものを提供できる
など。
その資源については「人」と「教育」ではないかという結論。
素敵な理想があってもそれが実行に落とされなければ意味が無い。
◆おもてなしという言葉は難しい
・定義されにくい
・ 人、気持ち、心などふわっとしたものにより作られる
◆「おもてなしをビジネスに」ホスピタリティ業界の今
【ホスピタリティ業界の今】
干すぽたりティ業界とは:
観光、ツーリズム、ホテル、レストラン、ウエディング、医療、介護などの業界。サービスに対するお客様の要求レベルが高く、良い商品を提供するだけでは満足をしていただけないため、より高度なサービス(ホスピタリティ)を提供しなければならない
インプット→アウトプット
通常のビジネス)最小のコスト→最大の利益
ホスピタリティ業界)最小のコスト→利益だけでなく、満足度の最大化
この業界では、その場その場での対応がすぐに消費されてしまう
→お客様の思い出は定量化出来ない
◎ なぜ旅行業(旅館業)は衰退してきたのか→インプットとアウトプットのバランスが崩れたのでは?
→収益とCSのバランス
…コストをかければCSは上がるがコストは悪化する→どう実現させる?
※CSのために利益をある程度還元する必要はある
◆経営数値の管理をする
基準:GOP30%以上
Step1:売上を調べる
Step2:費用を調べる
(1)原価
(2)人件費販管費
(3)その他の費用
Step3:GOPを計算する
★PLで比較する 地方温泉旅館vs外資系シティホテル
原価 旅館>ホテル
人件費 旅館>>>ホテル
GOP 旅館<<<<<ホテル
GOPの差の理由
(1)規模が違う:スケールメリット
(2)運営方法が違う:シンプルな運営、接客時間の違い
(3)人員構成が違う:清掃はアウトソーシング、など
ホテルは人件費が低い(少ない人員で回るオペレーション、サービス)
宣伝費:地方旅館は1軒のコスト。対してグループでやれば数百軒分まとめられる(1軒あてりの宣伝費↓)
収益構造(ビジネスモデル)に改善・工夫の余地はないだろうか
→投入している資源に対してアウトプットは最適かを考える
【前半まとめ】
・ 日本の旅館は収益性(生産性)が低く、潰れている
・ インプットとアウトプット(収益・顧客満足度)のバランスが悪い
・ うまくいくように対策をとる
◆グループワーク②
生産性の高い、旅館の一日のシフトを考える
生産性とは…input(コスト)を減らすが、同時にoutput(収益、CS、)を最大化する
参考)リゾート運営の達人になるためのKPI
1. 顧客満足度 2.5以上
2. 経常利益率 20%以上
3. Ecological pts 24.3pt以上
生産性を上げる取組
①マルチタスクな動き
・ サービスチームがマルチタスクであればお客様に合わせて動ける
・ ひとりの人がたくさんのスキルを身につける
②退勤する時15分刻みで何をやったか記録
→次の日にはフィードバック
・ 素早い改善が可能
・ 楽しい入力の仕組みでスタッフも億劫にならないように
③接客に集中するべき時は接客に集中することでCSと生産性を両立させる
④生産性を高めるために付加価値作業を見える化して計測
志は高く、運営は地道に
・ これまでのおもてなしが悪いのではない、生産性が低いので競争力がないだけ
・ 競争力を高め、おもてなしを表現する
・ そしておもてなしは生き残る
大切なことはおもてなしが「相手に伝わっているか」その上で期待を超える
→相手の感覚を捉え、察することが必要
◆質疑
Q:新しいスタッフにどう星野リゾートの「おもてなし」「ホスピタリティ」を伝えるのか
A:研修、OJT(かなり強い)。入社した時点で個人のホスピタリティはかなり高いものを持っている。それを引き出してあげる、その方向性を先輩がしっかり示す
効率を図りながらもやらされ仕事にならない
おわり