中田永一『くちびるに歌を』

中田永一『くちびるに歌を』

映画化ということで。
もう2年も前に読んだのか…。

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長崎五島列島の中学校が舞台。
女子だけの合唱部に、代用教員の美人顧問を目当てに男子が入部し、
混声合唱団としてNコンクール(NHKコンクール)を目指すお話。

病気の妻と娘を捨てて愛人と家を出たのに実家に金を無心にくる最悪な父親を持つなずなと、自閉症の兄を持つ友達のいない桑原。
二人が交互に物語を進める。

コンクールまでの日々の中で、登場人物たちの家族、恋愛、友情、そして産休に入った顧問の出産など小さなエピソードもちりばめられている。
最後は綺麗にまとまっているけれど、なんかすごく予定調和。
面白くないわけではないけどごくごく普通。

あえて舞台を島にした意味も感じられない。
ラストに明かされる桑原君の手紙については最近よく見る内容だし特に驚きも感動もなかった。
なずなと桑原兄のつながりも、きれいにまとめているけど綺麗なだけ。
自分たちで作詞した歌について、結局内容が明かされず終わり消化不良。
読み飛ばしちゃったのかしらと思ってしまった。
一定以上のレベルではあるし感動するけれど、
ほらこうやったら感動するでしょう?というネタを並べた感じで条件反射の感動と涙。
本屋大賞ノミネートのほかの作品に比べたら筆者の話題性だけの過大評価ではないかしらと思う。

デビューから10数年前、文章は昔からうまかったけど、何より今まで見たこともないような、はっと目が覚めるような仕掛けできらきらしていたのに。
なんだかストライクゾーンを広げた凡庸なネタで甘んじている感じがする。
才能は枯渇するのか?
百瀬もそんなにいいとは思えなかった。
なんだか切ないなあ。
ただの杞憂であって欲しい。

筆者が別の人だったらもっと違う感想だった気もするけれど、
いまいち邪念が入ってしまった。

それに中学時代、学校内のコンクールとはいえ本気で取り組んだことがあり、
かつ、まさにNHKコンクールの全国大会に出て、
その目標のために情熱と学生生活を捧げた友人たちを見ていたから、
合唱をこの程度の小道具としか使っていないことがすごく残念。

(読了日:13/3/23)

 

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