津村記久子『ポースケ』

津村記久子『ポースケ』

2013年読み納め。
『ポトスライムの舟』の続編的連作短編集(読んでいなくても問題なし)。

舞台は奈良、食事も美味しいカフェ。
店の従業員、客たちが各話の主人公となり、それぞれの些細な日常を綴る。
全体を通すとグランドホテル形式となっており、時系列としてタイトルにある『ポースケ』というノルウェーのお祭りを知り、その名を冠したイベントを店で開く日までの出来事である。

津村さんらしさでもある、堂々巡りの独白や過剰気味な説明、表現を変えての繰り返しなど、少しまどろっこしい部分もある。
それによりストーリーとしてのテンポは悪くなる(絞れば数分の一でまとめられそう)と感じはするものの、
先へ先へ物語を動かす文章でなく、ムダに旋回しながら進んでいくのも独特の味わいがあるなと感じた。
(1話がそれを許容できる程度の長さだったのもある)

登場人物は小学生から三人の子持ちの主婦まで、生活も悩みも様々だけれど、それぞれが精一杯生きている。
一歩一歩日々を踏みしめる足音が聞こえてくるのがいい。
人間関係の描写が繊細で鋭い、そこに感心する。
『ハンガリーの女王』の化粧水を巡る駆け引き、『コップと意志力』のストーカー的元カレの変質さとか人間のヒダが生々しい。

きちんと生きるだけではうまくいかない世の中のままならなさが、少し切なくなる。
ゴールやご褒美がなくても毎日を重ねていかなければない、人生の意味、生きる必要性をふと考えて虚しくなることもある。
それでも頑張っていくしかないという希望が持てる一冊。

(読了日:13/12/31)

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