
近藤史恵『マカロンはマカロン』
『タルト・タタンの夢』『ヴァン・ショーをあなたに』に続いて8年ぶりの新作。 ビストロ<パ・マル>のお客様が連れてくる謎を(主に)三舟シェフが解く日常の謎系ミステリ。 240ページ弱で8話と、短編のなかでも短めな話の詰め合…

近藤史恵『スティグマータ』
『サクリファイス』シリーズ最新作。 出版間隔は空くが息の長いシリーズである。 主人公の異なる『キアズマ』を入れると5作目。 本作の主人公もフランスのチームに所属する白石誓。 30を過ぎ、選手としてのピークが終わろうとして…

三崎亜記『ニセモノの妻』
久しぶりに新刊が出た気がする三崎亜記。 最近好きな作家の刊行ペースが落ちている気がする、悲しい。 今回は「夫婦」の関係が中心となっている短編集。 4つの話に繋がりはないいが、いつも通り、「現実のようだがちょっとおかしい世…

井上荒野『ほろびぬ姫』
両親を事故で亡くした直後に出会った美術教師と親しくなり、19歳で結婚した主人公のみさき。 4年間の結婚生活は穏やかなものだったが、ある日、夫が行方知れずだった双子の弟を連れて帰ってくる。 外見はそっくりな夫と弟に戸惑うみ…

砂田麻美『一瞬の雲の切れ間に』
小学生の男の子が死亡した交通事故をきっかけとして人生が変わってしまった人々の連作短編集。 苦しみからの再生というありがちなパターンだが、春に読むには前向きな気持ちになれる爽やかな物語である。 出版社の派遣OLは、職場の編…

長野まゆみ『フランダースの帽子』
短編集。 近著はイマイチ入り込めない作品が多かったが久しぶりに好きな雰囲気だった。 うすい幕一枚で隔てられたような感覚。 ミステリなのかホラーなのか、ファンタジーか、あるいは恋愛物なのか。 色々な要素が入り混じって、長野…

宇江佐真理『糸車』
年末に乳がんで亡くなり、単行本が文庫となって刊行されてきている。 作者がいなくなれば続きが読めなくなるので二重につらいのだが、幸いにもこの作品は一冊で完結。 蝦夷松前藩の家老の妻・お絹は、在府中の夫の死の報せに江戸にやっ…

朝倉かすみ『植物たち』
短編集。 タイトルにあるように、各話の登場人物を植物に喩えて冒頭に記されている。 演出としては面白いけどそれが物語や全体に影響を与えている感じはしないので、装飾的なパーツでしかない。 朝倉かすみ作品の中では毛色の違う感じ…

髙田郁『あきない世傳 金と銀 源流篇』
みをつくし料理帖が終了して寂しい気持ちだったけれど、新シリーズの刊行開始。 今回の舞台は享保年代の大阪。 みをつくし料理帖同様に江戸時代にたくましく生きる少女の物語である。 摂津の津門村に学者の子として生を受けた幸(さち…

吉田修一『怒り』
『悪人』と同系統のノワールな物語である。 タイトルの『怒り』は、物語の発端となる殺人事件の現場に残された犯人のメッセージだが、作中にあふれるのは怒りのようなアクティブな感情よりも、悲惨ではないが自分が望んだ物でもない、平…